女性にしろ男性にしろ、自分が原因で他人に不利益をもたらしたにもかかわらず、謝れない人がいます。これは自分が原因になっていることに気がついていないのではなく、わざと謝らずにいることが身に染み付いていることのほうが多いのかもしれません。
 
また、相手が謝らない人物だった場合、なぜそういった言動をするのか、自分の価値観に当てはめてもわからない。だから「自分とは合わない」と切り捨てようとします。
 
理解しようと考えることを労力の無駄と考えるのかもしれませんが、いずれにしても、相手のことを考える事ができない自分への言い訳として「気付けなかった」と言います。
 
今回は、この「謝れない」ことと「気付けない」ことが原因で、少しのことですれ違い、少しの助言で前を向き歩き出す人間たちのお話をお伝えします。
 

悩も事はささいなことが原因

 

地方ロケの帰りに、ローカル線で知り合いに会った。
知り合いといっても、お会いするのは今回が2度目で、ほぼ知らないといってもいい方である。
 
ちなみに、このローカル線は、移動手段が他に無く乗り込んだ列車で、この再会は偶然以外のなにものでもなかった。
新幹線乗り換えの駅まで20分といったところで、彼は挨拶もそこそこに突然こう切り出してきた。
 
「唐突なんですが、悩みを相談してもいいですか?」
 
「美里が歩けば相談に当たる」といわれるほど、こうしたシチュエーションはじつに多い。
聞けば、彼は奥さんと喧嘩をして家出中。
 
結婚して以来一度も謝らない嫁に疲れ果て、夫婦生活に限界を感じて離婚も考えているとのことだった。
 
喧嘩の内容や経緯などを聞いていると、本人に会わずともそのひとの持つ性質やトラウマ、生い立ちや育った環境が見えてくる。

歪んだオリジナルルールの形成

 

謝ることの出来ないひとの多くは、過去に褒められた経験が少ないひとに多い。
 
というのも、自分の中では頑張ったという自負があるのに褒められなかったという事実が、自分の非を認めない自我に繋がっている。
 
つまり、どれだけ頑張っても結局は褒められることがないのなら、自分の非を認めて謝ることをしないのも当然。
と、歪んだオリジナルルールが、知らず知らずのうちに身に付いてしまっているだけなのだ。
 
謝らない性格は、悪循環を生んでしまうことも多い。敵が増えてしまうことで誰かに頼ることができなくなり、すべてをひとりで抱え込む。その孤立感が、攻撃的な態度となって現れ、甘えることもできなくなってしまう。
 
奥さんの生い立ちは、まさにわたしの推測通りだった。
 

「理解」することで前に進む

 

彼はその話を聞いて、みるみる活気のある男の顔になった。弱いものを守ろうとする強者の顔である。
 
「そういう事だったのか。俺にすべてを委ねさせて、甘えさせてあげよう」
 
彼は、勇敢で深い愛情溢れる顔でそう話してくれた。甘えられる環境を作ることで孤立感を振り払い、意固地な性格から解放してあげようと考えたようだ。
 
ただ、彼女自身が自らの性格を認めて受け入れることが第一歩だということを考えると、時間はかかるであろう。
 
それでもゆっくり愛情をかけて、本気で向き合っていけば必ず変われるとあたしは信じている。

大切なのは、本質と向き合うこと

 

終点の駅、あたしは急いで乗り換えの新幹線に向かった。
 
別れ際、乗り換えでごった返すホームの雑踏の中で「仲直りしなさいよー!」と大声で叫ぶと、「わかりましたー!」と彼も大きな笑顔で返してきた。
 
「大切な人を失いたくない」そんな彼の気持ちがあたしを引き寄せたのか。
 
人生を共にするうえで今この一瞬を生きることは大切だが、その一瞬の裏にはひとそれぞれの自己の形成がある。
一時の感情に流されず、愛を持って本質と向き合うことが重要なのだ。
 
(ライター/すぎはら美里)
Photo by Olivia Harmon
 
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