不妊に悩む夫婦が増える一方、望まない妊娠による中絶を選ぶ女性もあとを絶ちません。
中には、どうしても中絶出来ずに出産し、貧困や生活苦から子どもを虐待してしまうなど、悲しい事件が起きています。
そんな今、産める能力を持つ人と育てる能力を持つ人をつなぎ合わせるための「特別養子縁組」という制度が、少しずつ活用されはじめているのです。
知っていますか?特別養子縁組制度のこと
特別養子縁組とは、昭和63年に制定された制度で、実父母が適切に育てられない6歳未満の子どもに対して『その子の利益のため』にとくに必要であると家庭裁判所が認めた場合に成立するものです。
この制度により、特別養子縁組が成立した親と子は法律上完全に親子ということになり、産みの親と子は完全に縁が切れることになります。
この法律が施行されてからも、特別養子縁組はあまり積極的に行われてきませんでした。
日本では、実親が育てられない子どもは施設に保護されるのが一般的で、養親となりたい夫婦がいてもマッチングするシステムもなかったのです。
そして施設に保護されている子どもは増え続け、今や満杯状態。
施設で育つ子どもたちが、親元で育つ子どもと同じように豊かな心を育むのはなかなか難しいという事実もあります。
そこで今、いくつかのNPO法人が、妊娠しても育てるすべがなくて困っている女性と、子どもを心から欲しいと願う夫婦のマッチングを行っているのです。
貧困の犠牲となる子どもたち
なぜ今この制度が活用されはじめたのでしょう?
これには「虐待」という大きな問題があります。
全国の児童相談所が平成24年度に対応した、「児童虐待」の相談件数は約6万件で、過去最多。
虐待により死亡した子どもは99人で、このうち心中、心中未遂による死亡は41人。心中を除いた58人のうち、43.1%(25人)が0歳児で、生まれた直後に死亡した子供も7人いたのです。
実母による虐待が33人(56.9%)と最も多く、この世に生を受けた瞬間に実の母親から殺されている赤ちゃん達のことを思うと、いたたまれない気持ちになります。
虐待が起こる背景は、その半数以上が「貧困」状態にあることから、生んでも育てられないと分かっている実親をサポートし、育てられる養親へと引き渡すことが子どもを救うことに繋がるのです。
欧米ではこうしたマッチングはさまざまな民間団体によって行われ、ひとつのビジネスとなっています。
日本は「子どもの命」を「売買」しないためにも、NPOによるボランティアという考え方で成立していますが、実際には望まない妊娠をした女性を保護し、出産させ、養親へ引き渡すのにかなりのお金がかかるのが事実。
この費用をどう取り扱うかという問題もまだ完全に整備されてはいない状況です。
さまざまな問題もある特別養子縁組ですが、それでも小さな命が虐待で失われるような悲しい事件がひとつでもなくなるなら、もっと行われるべきだと思わざるを得ません。
皆さんはこの養子縁組制度、もっと活用されるべきだと思いますか?
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Written by 杉本レン
Photo by -Marcus-