東日本大震災から2年が経過したいま、被災地に対する支援の意識は、社会全体で見ても低下しているといわざるを得ません。
復興庁の調べでは、被災地の事業の多くは進んでいないのが現状で、今後の課題は販路の開拓や人材の確保、そして寄付やボランティアの支援はもちろん、「物を買って応援する」という支援も必要とされているそうです。
私たちが個人でできる支援とその方法も、今後は考えていく必要があるのかもしれません。
そんな中、筆者が共感した、大阪にある大手化粧品メーカー『ナリス化粧品』の被災地支援活動内容を紹介したいと思います。
支援のキッカケは「フクシマ」だった
●その1:「フクシマ」から新たなプロジェクトが発足
震災後は多くの企業が、義援金やボランティア活動などで被災地支援に乗り出しました。
ナリス化粧品も当然、日本の一企業として支援活動に取り組みました。
ただ、ほかの企業とは異なり、支援するキッカケとなったもうひとつの理由が存在したのです。
それが「フクシマ」という地名でした。
ナリス化粧品の本社があるのは、大阪市の福島区という地区。
そのため、海外の取引先から勘違いされ、震災後は「放射能汚染は大丈夫なのか?」と、問い合わせが殺到したのだとか。
その対応に社員たちは追われ、直接現地に行って説明を余儀なくされるケースも多々あったそうです。
「地区の名前が福島というだけでここまで騒がれるなんて、福島県で暮らす人たちはどんなに大変な思いをし、ストレスを抱えているのだろう?」
そうした社員たちの率直な思いが支援の内容に組み込まれ、昨年5月に新たなプロジェクトが発足。
それが、『心人(こころびと)プロジェクト』でした。
●その2:直接触れ合う心の支援活動!
「多くの被災者を笑顔にしたい」「被災者の心も体も癒す、私たちができる活動って何?」
社員一丸となって“被災地で1万人を笑顔にしよう”という目標を掲げ、美容部員を中心としたボランティアグループを立ちあげ、福島県を中心とした被災地で、これまで計51回、2,082人に対して無償のハンドマッサージやアロマケアを行なってきたナリス化粧品(5月15日現在)。
ハンドマッサージはスキンケアより手軽に体験しやすく、また、手に触れることによって緊張を緩和し、心身のリラクゼーション効果をもたらすといわれています。
こうした、“直接触れ合う”被災地支援活動を継続して行なっているのです。
●その3:被災者女性の自立を応援
さらに、今後は被災者の自立の面でも支援が必要だろうと考え、「美容の知識や技術を教えてきた自社の教育制度を生かせないか」と思案します。
そして、被災地復興には欠かせない女性の活躍のために、行政等と連携し、ネイルやエステなどの美容職業訓練による被災者女性の自立サポートを開始。
まずは、震災で避難を余儀なくされた避難者女性の支援に乗り出したのです。
復興庁がまとめたデータによると、震災による避難者は全国で31万人。その中の約7万人が被災3県(福島、岩手、宮城)以外に避難しており、東京には9,005人、大阪には1,179人の避難者がいます(2013年4月4日時点)。
そのなかのひとり、大阪に避難してきた女性Eさん(22歳)は、放射能による健康被害を心配した母親の勧めで、故郷福島を離れ、ひとりで移ってきたそうです。
周囲に知り合いがいないなか、昨年10月から同社が行政と共同で立ち上げた『被災者女性の自立支援制度』を受けたことで目標ができ、今年の3月まで教育プログラムであるネイルの技術を勉強し、制度利用者として初めて資格を習得しました。
福島の親や友達にもネイルケアをしてあげたいと意欲に燃え、自立に向けた新たな一歩を踏み出したのです。
今後私たちがやるべき被災地支援とは?
「フクシマ」=「原発事故」という先行したイメージが、世界の人びとに与えた影響を改めて感じます。
「福島」という同じ地名であったことが、キッカケのひとつとして生まれた支援のかたち。
同社の活動は、社員一人ひとりの「素直な思い」によってかたちになったものであり、それが、より温もりのある支援活動という印象を受けます。
被災地に向けた思いが鈍化している私たちにとっても、今後何ができるか? どのような行為が支援といえるのか?
そんなことを再度考えさせてくれる活動といえるのではないでしょうか。
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Written by カタタク
Photo by M Hooper