男性に「かわいい」と言われることは、女性としてとても誇らしいことなのだろうと思います。

筆者(男性・30歳)だって、女性に「かっこいい」と言われれば、とても気持ちがいいのでたくさん言われたいです。

赤の他人から女性らしさ、男性らしさを肯定されるのだから、それはとても快感で、もっとかわいくなりたい、もっと愛されたい、もっと幸せになりたいと、欲求は果てしなく増大していくのが自然です。

 

承認欲求は連鎖し、増大する

 

服屋さんに行って「お似合いですよ」と言われれば、もっと服が欲しくなります。

フェイスブックに写りの良い写真を投稿し、「いいね!」をいっぱい貰えれば、もっと良い写真を投稿したくなります。

それはそれで大切な欲求ですが、外見だけで安易に飾ったポジティブな自己像は、いつか必ず崩壊し、途方もない虚しさに苦しむことになります。

下手をすれば、カルト宗教やインチキ商法、際限のない「自分磨き」に盲目になり、人間として成長することができなくなる恐れだってあるのです。

最悪、自分が生きていることをネガティブに捉えるあまり、薬物依存や自殺にだって発展しかねません。

「かわいい」という「女性性の承認」に夢中になる生き方を「カワイイ中毒」として、そこに潜む罠と、その欲求に向き合う心構えについて、考えてみたいと思います。

 

「カワイイ中毒」のメカニズム

 

ひとは他人から承認を得ることによって、肯定的な自我を獲得し、人間として成長していきます。

幸せは、自分の中にあるのではなく、他人との関わりの中から見出すものなのです。

そこで、多くのひとはファッションやステータスなどで武装し「わたしはひととは違うの」という差別化=個性の演出と、「わたしはみんなと一緒」という模倣=安心感を組み合わせて、安直にポジティブな自己像を獲得しようとします。

実際、これらの方法は若いうちは概ねうまく働き、ある一定期間は幸せで居続けることができます。

すべてのメディアは資本主義を根底に持ち、消費を煽るのが商売なため、際限なくニーズを提供し続けるので、自我を確立していない若者はそれに翻弄され続けます。

かわいい、かわいい、かわいい!

かっこいい、かっこいい、かっこいい!

これが正義だと、徹底的に刷り込まれるのです。

しかし、外見の美は期限つきのものですし、外見だけで評価されると「みんなはわたしの外見だけ、身体だけが好きなんだ。本当のわたしを愛してくれているわけではないんだ」という不信感に突き当たります。

欲求はひたすら煽られるのに、承認は減っていくという現代社会のパラドックスがここにあります。

だから、我々は結婚を焦るのです。

女性は、いつまでも綺麗でいる、美魔女になりたがるのです。

男性は、いつまでも反抗心を忘れない、ちょい悪オヤジになりたがるのです。

二次元に走ったり、アイドルを追いかけたり、韓流にハマったりして、現実から逃避するのです。

でも、本当に幸せになりたいのなら、そういった行為はたぶん間違っていると、筆者は思います。

 

オードリー・ヘプバーンがいつまでも愛される理由

 

「年をとったことで、私はまたひとつ愛を知った」

女性ならほとんどのひとが知っているであろう、オードリー・ヘプバーンの名言です。

オードリーが映画界で活躍したのは、グラマラスで細い眉の、セクシー女優が全盛の時代。

背が高く、痩せ過ぎで胸が小さく、目が大きすぎて、眉毛が濃過ぎる彼女は、あらゆる面で規格はずれでした。

しかし彼女は、その容姿を受け止め、ほかの女優に合わせるのではなく、あくまでも自分らしさを失わずに役を演じ、多くの女性の共感を得ました。

中年以降は、老いをメイクで隠すことなく、自分の年齢にあった役をじっくり選んで出演していきます。

そして晩年は、飢餓地区の子どもたちに人生を捧げるべく、ユニセフの特別親善大使として活動をしました。

シワの目立つノーメイクの肌、まとめただけの髪はほつれっぱなし、粗末なシャツ姿で、貧困に喘ぐ子どもを抱きしめる彼女。

悲しげな眼差しには、かつてのファッション・アイコンの面影はありません。

しかし、そんなオードリーの姿は、愛の意味を問いかけ、ひとびとの心を揺さぶるとともに、女性として気高く、美しく生きることの素晴らしさを教えてくれました。

「そんなことをするのだって、承認を得たいだけなんでしょう?」とあなたは思うかもしれません。

しかし、彼女には承認を得たいがための偽善活動とは、決定的に違うところがあります。

「ひとに認められたい」という自己愛よりも、「ひとを認めたい」という他者愛を優先しているのです。

フランスの作家、カミュは、不条理に満ちた人生に対し、個人が向き合う方法として「自殺」、「宗教(妄信)」、「反抗」という三つの概念を提唱し、その中で最も誠実な生き方は「反抗」であるとしました。

カミュの言う「反抗」とは、年齢に反抗したり、権威に反抗したりすることではありません。

不条理を受け入れ、明晰に見続けることです。

それは一番難しいことなのですが、承認欲求に振り回されず、豊かな人生を送るための唯一の方法でもあります。

かわいい、かっこいい、と言われたい願望の底には、「こういう風に見られたい」という欲望と、「こういう風に見られたら恥ずかしい」という恐怖があります。

みんな、自分の愚かさ、醜さ、汚さを知っていて、そこから逃れたいのです。

しかし、承認欲求を肥大し続けること、無限に幸せを欲しがる生き方は、人の成長を妨げるため、哀れな末路をたどります。

我々に必要なのは、快楽ではなく、人生です。

たとえ容姿が悪くても、派遣社員でも、キャバ嬢でも、AV女優だとしても、尊厳を保ち、気高く生きることはできます。

そのために必要なのは、頭から煙が出るまで、他者のことを考えること。

徹底的に相手のことを思うこと。

難しいことですが、本気でやれば、誰にだってできることです。

気高い女性は、容姿に関係なく、美しいのですから。

 

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Written by マツタヒロノリ
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