ソチオリンピックフィギュアスケート男子シングルで、羽生結弦選手が金メダルを獲得と、日本人初の快挙を成し遂げました。しかし、このときの羽生の演技はミスがあり、本人も満足できない演技でした。なぜ2度も転倒して金メダルを取れたのでしょうか?

 

すっきりしない金メダル

 

「悪いけど凄くみっともないメダルの取り方だったね。日本人の金メダル史上一番恥ずかしい 」
「大輔はノーミスだから大輔がメダルでいいと思う。二回もこけてる羽生が優勝とかおかしい」

実際このような書き込みがネット上に散乱しています。せっかく金メダルと取ったというのに、視聴者側からすると転倒ばかりが印象に残ってしまい、すっきりしない感じが漂っています。羽生が2度転倒しても高得点を出せた理由は何なのでしょうか?

 

パトリック・チャンを制した理由

 

羽生のコーチであるブライアン・オーサーは、最初のジャンプが失敗することを想定したうえで演技構成を考えたと言います。後半の基礎点が1.1倍になる部分に高難度ジャンプを多く盛り込み、挽回できるプログラムとなっていたのです。
これに対し、2位のパトリック・チャンはひとつひとつのジャンプの出来栄え(GOE)を稼いで高得点を稼ぐ演技構成になっていたので、小さなミスが続くとGOEが稼げない=点数が伸びないという内容だったのです。
両選手ともベストな演技ではない中、羽生の戦略勝ちといったところでしょう。

 

けが人続出の中で勝ちとった栄誉

 

今回のオリンピック男子フィギュアは、全選手がミス連発の自滅合戦となってしまいました。その理由は「4回転ジャンプ」という魔物の存在です。

ロシアのプルシェンコ選手が怪我で棄権してしまうという波乱がそれを象徴しています。4回転の申し子と言われ、15歳から4回転ジャンプを飛びつづけた彼のスケート人生は故障との戦いでした。4回転ジャンプは体に大変な負担をかけるため、彼の腰椎の椎間板は潰れてしまい、手術した腰にはボルトが4本入り、片膝は半月板がない状態となったのです。

男子フィギュアスケートはどんどんレベルが上がり、今や4回転なしで高得点は期待できません。しかし4回転は選手たちの故障のリスクと隣り合わせなのです。
ミス連発となった今回のオリンピックは、主要選手たちが故障を抱えながら戦った結果です。高橋大輔選手が足を怪我していたことは有名ですが、銅メダルのデニス・テン選手や、カナダの4回転ジャンパー レイノルズもまた直前の怪我に泣かされました。

このような中、練習中から高レベルの4回転を飛び続け、ずっと怪我をしなかったというだけでも羽生のジャンプが普段からどれだけ精度が高かったかがわかります。

 

完璧でない金メダルの意味

 

羽生選手の金メダルは、時代が望む「4回転を入れて完璧なプログラムを滑る」というレベルに達してはいませんが、それに世界一近い位置にいるという意味での金メダルだったのです。
羽生はまだ19歳。今後、大きな怪我をすることなく「4回転を入れて完璧なプログラムを滑る」選手へと成長してほしい。そう願ってやみません。

 

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Written by 杉本レン
Photo by 蒼い炎 [ 羽生結弦 ]/扶桑社

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