誰かを好きになるということはまるで、突然カミナリにでも打たれるようなもの。
或いは、恋に落ちるということは予期せぬ落とし穴にはまってしまうようなもの。

そう、本気で人を愛するということは、理性では抑えきれない強く激しい衝動であって、この奔流のような感情を、第三者はおろか自分自身にだって止めることはできないのだ。

だから、やめておいたほうが無難だなと思える冷静さが残っているということは、それは「本気の恋」ではないのだ。
もっとも、この人間にはどこかウソがあるなという第六感だけは常に働かせておくべきだけど……。

 

妻子のある人を好きになってしまった…

 

さて、妻子のある人を好きになってしまった……なんてことは、大人になればなるほど、余計に起こりえることである。
好きな人に妻子がいるということでブレーキがかけられるようなら、どんなに楽だろう。

もしも、あなたの中にカレの家庭に申し訳ないという思いのほうが強いならば、突っ走るのはやめたほうが賢明だ。

でも、女なら、胸の痛む事実ではあるけれど、愛したい、逢いたいという思いはどうにもとめられないというほうがきわめて自然だと思う。

しかしながら、不倫の恋には大きな覚悟が必要である。
普通の恋とは違った腹のくくり方がなければ、そこに待つのは悲劇だけだからだ。
相手を追い詰め、すべてを奪ってしまうだけでなく、自分自身もつぶれてしまう。

そしてその覚悟とは、恋は望むが結婚は決して望まないということだ。

妻子あるカレはあなたの耳元でこうささやくかもしれない。
「妻とはあまりうまくいっていないんだ。もう何年も関係がない。」
「子供もいるけど、ハナからオレは子供には興味がないんだ。」

そしてそのあとこう付け加えるかもしれない。
「だから、いつかキミと一緒になりたい……。」

しかし、それが実現できるのは現在の消費税以下の確率だと思ったほうがいい。
基本的にオトコは家庭や、ましてや仕事をかなぐり捨ててまで恋には夢中になれない。

オンナはいざとなれば、すべてをかなぐり捨てて、愛する人の胸に飛び込んでいける。

オンナよりずっと保守的な生き物であって、現行の制度をひっくり返してまで、恋にうつつを抜かそうとオトコは思わないのだ。
ただ、始末の悪いことに、でも恋はオトコの大好物ときている。
恋は恋のままで大切にフリーズドライさせたいと思うオトコ。
恋を結婚に昇華させないと満足できないオンナ。

不倫の悲劇はすべてそのギャップにある。

 

不倫相手は、家庭ではいい旦那であり、父親である

 

不倫をしているオンナたちは、いつしか、消費税程度のはかない確率に躍起になり、それにかけ始める。
しかし、自分を前にして甘い愛の囁きを惜しみなく与えてくれているオトコはいったん家庭というあなぐらに戻ると、驚くくらい家庭的なふるまいをしているものだ。

確かに恋心やときめきはとうに失せているかもしれないが、同士でもある妻と正月旅行の話をしたり、親戚の話を楽しそうにし始める。
切れた電球を変えたり、ゴミ出しなんていうあなたの見たことのないことを家の中では当たり前のようにする。
子供は妻任せで興味がないと言っていたのに、父親の本能でわが子を前にするとその存在を守り、あやしたりもする。
こんな生活を、世間的、経済的……さまざまな事情でオトコはそうやすやすと捨てられないのだ。

さあ、この現実にたえられるだけの強さや覚悟があたたにはあるだろうか。
しかしその反面、覚悟を伴った命がけの恋はどんな恋より輝かしくもあるのも事実だ。

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南美希子プロフィール

 


南 美希子
司会者、エッセイスト。
東京生まれ。
元祖女子アナ。
聖心女子大学3年生のときアナウンサー試験に合格。
テレビ朝日のアナウンサーを経て独立。
田中康夫氏との「OHエルくらぶ」、三宅裕司氏との「EXテレビ」などで司会をつとめる。
光文社のJJに「お嫁に行くまでの女磨き」、VERYに「40歳からの子育て」を長年にわたって連載し、熱烈な支持を受ける。
現在もワイドショーのコメンテーターやシンポジウムのコーディネーター、トークショー、講演、執筆などで活躍中。
化粧品「フォークイーンズ」の開発や美容医療情報のフリーマガジン「MITAME」の編集長もつとめる。
講談社「グラマラス」では「LOVE握力」というタイトルのブログエッセイを連載中。
近著に「オバサンになりたくない!」「美女のナイショの毛の話」(ともに幻冬舎文庫)がある。

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Written by 南美希子
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