男性のほとんどは、三度の飯より“下ネタ”が大好きです。
まるでイギリス人が天気の話をするかのように、男たちは日常的なコミュニケーション手段として下ネタを用いています。
嵐の櫻井くんやゴルフの石川遼くんはもちろん、子役の鈴木福くんだって、付いているものは付いているわけですから、残念ながらオゲレツ・ワールドの住人。
下半身関連のトピックには、こぞって飛びつくことでしょう。
男って本当にバカですよね。
しかし、いったい何故、彼らはあんなにも下ネタが大好きなのでしょうか?
その理由を、社会学的な観点から分析してみました。
下ネタの社会的機能とは?
古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、すべての動物のなかで人間だけが笑うと考えました。
現在の動物学でも、声をあげて笑うのは人間だけとされています。
つまり、笑いとは社会を営む人間特有の行動であり、そこには社会的機能があるのです。
また、男らしさや女らしさという通念は社会が作り出すものなので、笑いに関する行動規範にはその社会に応じたジェンダー差が生まれます。
日本では、笑いに対して女性は受動的で男性は能動的、男性は衆人を前に下ネタを語るが女性はそうしないといった明確な男女のちがいが見られますが、そういった差はたいていの社会に存在するのです。
では、男社会における“下ネタの社会的機能”とはどのようなものなのでしょうか。
笑いが持つ5つの機能から、それを分析してみましょう。
●その1:人間関係の潤滑油
初対面のシーンなどでちょっとした冗談を口にすると、たがいの緊張が解け、心理的なへだたりを縮めることができます。
もともと笑いにそなわっている緊張緩和の力を、ひとはコミュニケーションに利用しているのです。
そして下ネタは、一気に心理的距離を縮める、抜群のコミュニケーション方法になりえます。
なぜなら、自分の恥ずかしいプライベートを晒すことは、心理学でいうところの「自己開示」というテクニックにあたり、相手に親しみやすさを抱かせる効果があるからです。
つまり、男性にとっての下ネタは、日本的な「へりくだりの文化」のひとつともいえるでしょう。
●その2:集団凝集性の維持・強化
笑いのツボは、知識・経験・感性・価値観のあり方といった、人格の核心をなすものによって大きく異なります。
したがって、笑いのツボが同じということは、人格の核心を共有できるということになり、人々の仲間意識を維持・強化するのに役立つのです。
そして、男性はおしなべてスケベですから、下ネタは共通言語として機能します。
だからこそ、日本の接待ではキャバクラやスナックといった、女性がサービスするお店が選ばれるのです。
●その3:自分たちと異質な人間の排除
笑いには、集団凝集性の強化という機能の裏返しとして、自分たちと異質な人間を排除する機能もあります。
笑いを共有できない人間に対し「つまらないやつ」というレッテルを張り、嫌悪や軽蔑の念を生むのです。
男同士の社会では、下ネタに乗れない男性は「まじめぶっている」とか「童貞くさい」などと揶揄される傾向があります。
女性からすると悪習に思えるかもしれませんが、下ネタで笑えてこそ「一人前の男」とされる風潮が根付いているのです。
●その4:社会化の促進
子どもが世の常識からはずれたことをすると、大人はそれを見て笑います。
すると子どもは、笑い者にされたと感じ、自分の行動をコントロールするようになっていきます。
笑いには、ひとが社会へ適応するのを促す機能もあるのです。
そして男性は、思春期になると強烈に異性を意識するようになりますが、それを恥ずかしいと感じる心も同時に持ち合わせています。
そこで、下ネタが必要になるのです。
下ネタで笑ったり、笑われたりすることによって、男性は「好きな女性にエッチなことをしたくなるのは、ごく自然なことである」と理解し、恥ずかしさを乗り越えることができます。
いわば下ネタは、男性が大人になり、好きな女性にアタックするための通過儀礼なのです。
●その5:痛烈な社会批判
すぐれた風刺家は、同時にすぐれた批評家でもあります。
現実社会の悪や歪みをえぐり出し、それを誇張して笑いものにすることで、人々の批判的関心を高めることができるのです。
『ガリヴァー旅行記』などの著作で知られる希代の風刺作家、ジョナサン・スウィフトも、社会批判として下ネタを多用しました。
巨大なガリヴァーが、リリパットの宮殿の火災を小便で消し止める挿話は、不適切な作法で良いことを行うという、トーリー党の違法な和平条約のメタファーと言われています。
下ネタは、動物的で品のない話だからこそ、権力を皮肉るための強力なツールになりうるのです。
大人の女性には“下ネタ力”が必要?
こうして分析してみると、下ネタと社会には深い関係があることがわかります。
そして、男性が下ネタを好む一方、女性がそれに対して消極的なのは、男性上位社会の表れでもあります。
社会によって作られた「女性らしさ」を受け入れているからこそ、女性が下ネタで笑うのはタブーと考えられているのです。
しかし、ご存知のように世の中はどんどん変わっています。
現在では、グラビアモデルの壇蜜のように、下ネタを使いこなす女性が“知的”と見なされる場合だってあります。
性に関する笑いをタブー視し続けるか、それとも「大人のブラックジョーク」として楽しむか。
なかなか難しい問題ですが、少なくとも男性は、下ネタに対して寛容な女性の方が話しやすいと感じるもの。
あまりに失礼な男性は論外ですが、ちょっとした下ネタに微笑むくらいの度量は、大人の女性として身につけておいても良いかもしれませんね。
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Written by マツタヒロノリ
参考文献:「社会学がわかる事典」森下伸也/日本実業出版社
「図解でわかる心理学のすべて」深堀元文/日本実業出版社
「人に嫌がられるしぐさ、人に好かれるしぐさ」渋谷昌三/WAC