違法ダウンロードが刑罰化!音楽業界も「意味がわからない」

 by 郷雷子


「好きなアーティストのCDを買って、PCに取り込んで、スマホで聴く」
こんな日常風景が、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金を科せられる可能性があることをごぞんじでしょうか? 先日、法案提出から5日間という異例の速さで成立した新しい著作権法です。どんな内容かご紹介いたします。

購入したCDを自分のPCに取り込んでも犯罪?

6月15日、著作権法の改正法案である「リッピング違法化+私的違法ダウンロード刑罰化法案」が、参議院本会議にて賛成多数で可決。今年10月1日から施行されます。

これまでは違法アップロードに対して10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金がありましたが、違法ダウンロードの刑事罰則はありませんでした。
そこに今回、「私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権または著作隣接権を侵害する、自動公衆送信を利用して行うデジタル方式の録音または録画を、自らその事実を知りながら行って著作権または著作隣接権を侵害した者は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すること」(※1)という刑事罰則が設けられたのです。

この法案に沿うと、今まで何気なくやっていたこんなことも刑事罰の対象となります。

●自分で購入したDVDのバックアップをとるために、解除ソフトを使ってコピーガードを外してPCに取り込む(=リッピング)
●自分で購入したコピーガードされたCD(CCCD)を、解除ソフトを使ってコピーガードを外して携帯プレーヤーに入れる(=リッピング)
●アーティストのPV動画をファンの誰かがYouTubeにアップ、自分も気に入ったのでPCにダウンロードして保存(=違法アップロードのものだと知りながらダウンロード)
(※2)

これらの行為で即逮捕というわけではなく「親告罪」なので、被害側が訴えなければ警察にも逮捕をする権限はありません。

「音楽業界の発展のため!」と言っていますが…

日本レコード協会が調べたところ、音楽配信数は正規のものが年間4億4000万件なのに対し、違法のものは43億6000万件だったそうです。これを販売価格に換算すると6,683億円。(※3)

刑罰化を主導した河村建夫衆議院議員のオフィシャルサイトから引用すると、「こうした状況に鑑み、(中略)違法ダウンロードを防止し、もって音楽等に係る文化の振興及び産業の健全な発展に寄与するために必要なものです」とのこと。「音楽業界を復活させるためにも、違法ダウンロードは根絶すべき」(※4)という主張のようです。

かねてから日本レコード協会の呼びかけで、浜崎あゆみや宇多田ヒカルといった有名アーティストたちが「違法ダウンロード禁止」を呼びかけるキャンペーンを行ってきました。
アーティスト自身の“食いぶち”を守るためには、少し強引な法改正もしかたないのでしょうか……。

当の本人たちも「意味が分からない」

当の本人である“音楽業界”のかたはどう思っているのでしょうか。

国内外の様々なアーティストのレコード・CD販売を手がけている中堅レコード会社のディレクターAさんにお話をうかがいました。するとAさんは「この法改正に何の意味があるのか分からない。正直、レコード会社の人間はこの話題にそれほど関心が高くない。“またワケわかんないことやってるよ”ってぐらいで」との感想。また刑事罰化に関しても、「法律で罰したからといって違法ダウンロードを行う人数が減るとも思えないし、実際にこれで逮捕者が出るのかも疑問、ましてや音楽業界やアーティストの収入が増えるとはとても思えない」(Aさん)との考えでした。

また、この会社のレーベルに所属する女性アーティストは「この法改正は、アーティストの著作権が守られているという感じはしないです。むしろ、複製されていても、自分の音楽を聴いてくれるひとが広まってくれるのなら、それもありかな」と語ります。

前出のAさんも「違法ダウンロードが減ることよりも、音楽に触れる機会が減るかもしれないと考えるとちょっとこわいですね」と、刑事罰化の危険性を指摘しました。
果たしてこの法改正は、本当に音楽業界の発展のためになるのでしょうか?

ネットユーザーはみな犯罪者予備軍?

「音楽はダウンロードしないから関係ない」と思っているひとでも油断できません。YouTubeをストリーミング視聴する際、「一時ファイル」と呼ばれるデータファイルが内部的にダウンロードされています。これについて「違法ダウンロード」となる可能性は当面はないとされていますが、今後どうなるかはわかりません。(※5)

つまり、ほとんどのインターネットユーザーが「犯罪行為」を指摘される可能性があるということ。一部では、「他の目的で逮捕したいときに、表向きにこの著作権法が利用されるのでは」という声もあります。

すでに10月1日からの施行が決まってしまったこの新しい著作権法。刑事罰を受けないように、消費者の認識も改めなければいけませんね。


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(参考)
※1【一般社団法人 日本レコード協会|プレスリリース】
http://www.riaj.or.jp/release/2012/pr120620.html

※2【違法ダウンロード法(禁止法)まとめWiki - 違法になるorならない】
http://www39.atwiki.jp/dl-ihou/pages/14.html

※3【NHK NEWS WEB 違法ダウンロード罰則化の波紋】
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/0621.html

※4【活動報告|河村建夫 衆議院議員(山口第3区)オフィシャルサイト|T's PARK】
http://www.tspark.net/katsudo/33.html

(更新履歴)
※5
一部、誤解を招く表記がございましたので、修正させて頂いております。(2012年6月29日16時)

Written by 郷雷子
Photo by omohit